自由が丘、二子玉川の歯科、歯医者なら尾山台歯科クリニック

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対談・入れ歯について

セオリー通りになどいかない。だからこそ、患者の求める範囲でリカバリーにつとめる

菅野:
歯医者さんと患者さんの関係についてですが、私事ですが、昨年私もとうとう奥歯を抜くことになりまして部分入れ歯にしたわけです。改めて、歯はものすごく大事なものであることに気づきました。

しばらく入れ歯には慣れませんでしたし、食べるときにも違和感がありました。前と同じような力で噛むこともできない。本当に初めて気づきました。そうなると、これ以上入れ歯を増やしたくないので、ようやく定期的に歯医者さんに通うようになるわけです。痛みを知ってようやくです。多くの方がそうなんだろうなとも思いました。

逆の言い方をすれば、それまでは「痛いから治して下さい」「治りました、ハイさようなら」だったわけです。実はこれが多くの歯医者さんと患者さんの関係性であろうと思ったわけです。

そこで伺いたいのですが、普段はどのように患者さんとの関係性を構築していきたいとお考えですか?

自由が丘,入れ歯,義歯川元院長:
私は、今のままで良いと思います。

理想論を言えば、痛くなる前からきちんと早めに歯医者さんへ通いましょう。もしくは、問題とされているのはご自身の痛い歯の場所だけですが、その痛みの原因は巡り巡って実は反対側の歯にもあったり、下の歯の痛みは上の歯の噛み合わせにも原因があったり、だから全体的に一口腔単位で診断しましょうというのがセオリーです。

私も含め若い歯科医師が、勉強会などへ参加してどんどん頭でっかちになっていくと、そのセオリーに従ってやらなければならないものだ、それが人に誇れる治療のプラニングである、となってしまいます。

ところがいざ開業し、自分の責任の下で仕事をし始めたとき、やはり人は痛くならないと来てくれないですし、心底危機感を抱いてはくれません。ですから現在は、患者さんが、痛くなってここまでの状況になってしまったから大変な治療になるけど、何とかリカバリーしてあげたい!と思うようになりました。

患者さんがご自身のQOL(Quality of life)のため、歯にかける時間など、日常生活の支障にならない程度に満足を得ることのできる口腔環境を提供することが、私たちの本来の仕事であると考えてます。

必要以上に、予防であるとかメンテであるとかのために通いなさい、というのはプレッシャーになると思うのです。私だったら行かないですよ(笑)

菅野:
まあ、私も行きませんでした(笑)

川元院長:
やはり、お口の中が大変な状況になって、危機感を持ち一大事だと一時的に考えますよね。でも、私もそうなのですが、人は忘れてしまうし、面倒くさいし、もっと他に大事な事があるし、やりたい事もある。

それを受け止めてあげます。「良く来てくれたね。あの時はあんなに大変だと思っていたのに忘れちゃったでしょ。でも、そんなものだよ」と。

でも、来てくれたからには、私ができる限りのことを、患者さんの求める範囲の中で、何とかリカバリーして差し上げましょう、と。そうしてあげることが、私たちが最大限できることですし、それしかないのだろうなと思っています。

 

ギャップは存在する。しかし、それがニーズであればそれに応えていくことが必要。

菅野:
現在の製品やサービスは、マニュアルですらネットでダウンロードして下さいというようなものも多い。ですから、手渡されたそのものこそが全てである。歯医者さんの場合ですと、痛くなくなったという事実が全てであると思います。

その上で、長く保っているとか、噛みやすくなったとか、治療後の満足度によってはじめて価値を知ることになります。治療費を払うときは高かったと思っても、それが数年間維持できれば安かったに替わりますよね。
そこで、次にお伺いしたいのは、歯医者さん側の満足とはどんなものなのだろうということです。

川元院長:
ダメだと思っていたものが機能回復できて、「しっかり噛めるようになりました」と感謝されるのはやはり嬉しいです。逆に、こちらは一生懸命やったつもりでも、いまいち噛めないとか痛いとか言われると凄く残念です。

それが、銀歯だろうがセラミックだろうが、保険の入れ歯だろうが自費の入れ歯だろうが関係なく、「調子がいいね」と言われることは嬉しい。

だから、治療後に来院しなくなるということもありなのですよ。何故なら、調子が良いから来なくなる。実は、そういったことに満足を覚えるわけです。

自由が丘,入れ歯,義歯菅野:
患者さんは噛む機能が回復されたということですね。

川元院長:
そうですね。

菅野:
便りが無いのは良い知らせ、ということでしょうか。

川元院長:
そういうことになりますね。

菅野:
結果的に、そこを患者さんが喜んでくれれば、それが満足であるということですね。
少し、意地悪な視点かもしれませんが、患者さんは実はある部分にしか満足を覚えていないのではないか、歯科医の治療の表面しか見ていないかもしれないというようなことを感じることはありませんか。

川元院長:
それはあります。私が説明していることが、患者さんにとって簡単に理解できない場合もあるわけです。しかし、患者さんはできるだけスピード感を持って早く済ませてもらいたいと当然求めるわけです。

ある程度責任レベルが高くなれば、施す治療技術や精度を高めるために必要となることが増えてくるわけです。だからこそ、それなりの手間が必要であることを、画像や動画を使って見せたりしながら説明して進めていきます。

それでもやはり、患者さんは最終的には早めに済ませてほしいと望んでいるのだと思います。そこにはギャップを感じます。何でもかんでもという事ではありませんが、やはりそれがニーズであり、そのニーズに真摯に向き合って応えていくことが絶対的に必要だと思います。

 

ストーリーを仕立てて説明を重ねる。
患者が「まずい!」と感じてくれるように。

菅野:
今先生が仰った、「責任レベルが高くなる」という部分は、患者さんに伝わりにくい部分ではないですか?

川元院長:
伝わりにくいですね。

菅野:
技術の難易度もそうですが、患者さんは小さなものと捉えているけれど、健康であったり噛む機能において凄く重要なポイントであること。所詮我々患者は素人ですから、そこは非常に伝わりにくいポイントの一つなのだろうと思ったわけです。

それが伝わらないが故に、痛いとか時間がかかるといったことが、早めに来院することの妨げになってしまうのではないか。

理想論ですが、本当は「大丈夫でしょうか?診て下さい!」と来院しても良いわけですよね。私自身、区から健康診断の案内が来ると検査をしてもらい、結果を見て「何もなかった!」と安心するわけです。

川元院長:
定期検診で歯周病の検査を行い、「大丈夫ですよ」と告げられてホッとして帰られる患者さんもたくさんいらっしゃいます。賢い歯医者の利用法のひとつですね。早めに来院して問題が起きる前に、その芽を摘み取っておけば、確かに後々簡単な治療で済むことが多いですね。

菅野:
歯医者の利用のバリアになっていることは何だとお考えですか?

川元院長:
余計なことを見つけられてしまうということがあると思います。痛くも痒くもないのに、そこが悪いあそこが悪いという箇所を見つけられてしまう。それによって不安にさせられてしまう、ということがあると思います。

菅野:
なるほど。
でも、それは患者さんにとってラッキーなことですよね。

川元院長:
そう捉えてくれる方もいますが、なかなか足が向かない方というのは、人間ドックと同じで、胃のポリープが見つかることが怖い。やはり怖いのだと思います。何かが見つかって、対処しなければならなくなるのがイヤだなと感じるといことがあると思います。

菅野:
やはり心理的な部分ですよね。痛さも感じていない、不具合も感じていない。下手に余計なことが見つかれば、お金も時間もかかる。エネルギーも削がれてしまう。

川元院長:
通院されてくる方々には、なるべくお伝えします。

銀歯などが被せてあるその中は、被せてあるがためにどうなっているか全く分からない。歯の内部の神経が取られていたりするので、かなり虫歯が進行してしまっていても痛くも痒くもない。それで、銀歯がボロリと取れてやって来たとき、それが患者さんにとって、治療の自覚が生じる初めてのタイミングだったりすると思うのですが、そうとう虫歯だらけになっていて、抜かなければならない状態にまで及んでしまってますね、というとっても残念なケースは珍しくないと思います。

そういったとても残念な結末を迎えて欲しくない訳です。だって、歯を抜かずに少しでも長持ちさせられた方が良いに決まっているじゃないですか。

でも自覚症状の無さがこういった悲惨な結末へと導いてしまうことが少なからずあるのです。ですから、なんとか理解していただくために、実際の過去の症例スライドやマイクロスコープで撮影した動画や静止画を見ていただくことで、何とか手遅れを防ごうと必死になる訳です。

さらに、そこからリカバリーした状態の写真を見せてあげて、「このタイミングでマイクロスコープなんかを用いて処置介入出来れば、まだまだ歯を保存できます。ここから5年、10年間、歯を抜かなければならない状態を先延ばしできれば、最高ですよね!」というような話です。なるべく抜歯にならずに済むように、歯の寿命を少しでも長く全うさせてあげるための提案ですね。

菅野:
ストレートな質問ですが、そういうやり方は効果があるものですか?

川元院長:
やはり、効果ありますね。逆に、それをやらないと、患者さんが本当にまずいと思っていても全然理解してくれないことが多々ありますので、脅すのではなく治療の必要性を伝えるために、私が作ったスライドなどを使っています。

歯科の治療の分野では、そうしなければならない局面があって、例えば自覚症状のない虫歯に対してどう対応すべきか、それと一番は咬み合わせの問題です。

咬み合わせの問題が有っていろいろな問題が出ていることの説明は凄く難しいのです。私は何度も、それをストーリー仕立てで作って患者さんに説明しています。流れを作ってから治療を進めるというやりかたを、ある時期から始めました。



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