自由が丘、二子玉川の歯科、歯医者なら尾山台歯科クリニック

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対談・入れ歯について

口の中の問題は二つ。汚れの問題と力の問題

菅野:
咬み合わせの問題を説明するのが難しいのはどうしてですか?

川元院長:
口の中に問題が生じるのは、二つの原因しかないのです。汚れの問題と力の問題です。

菅野:
力?

自由が丘,入れ歯,義歯川元院長:
そう、力です。
汚れの問題については、皆さんもなんとなく歯ブラシしましょうとか言われているので、お口の中を一生懸命磨くということは無意識に近いレベルでありますよね。

当院を訪れる患者さんは、特に女性は健康意識の高い方が多いので、歯ブラシをし過ぎなくらいな方が多いのです。それなのに、繰り返し虫歯の治療を何度も行っている、歯周病が進んでいて止まらない。通っている歯医者さんは、とにかく磨きなさいを繰り返すばかりなわけです。

実は、汚れの問題ではなくて、力の問題が大きなファクターとして、歯を支える周りの組織に大きなダメージを与えているのです。

男性で奥歯を抜く方というのは多いのですけれど、実は噛み癖です。日本人には咬み合わせが理想的な人はそれほどいませんが、問題の起きにくい咬み合わせの基準というものがあるのです。奥歯と前歯の上下的なバランスなのですが、日本人にはもともと矯正治療をする習慣もないですし、けっこう難しいことが多いのです。加えて、日本人はバリバリ仕事をしますから、ストレス要因から夜中の食いしばり歯ぎしりをする人が多いのです。

そうなると、奥歯などはグラグラに揺さぶられ、凄い負荷がかかりやすい方も多いのです。そういった原因で、虫歯の治療はしたけれどもまた直ぐに治療しなければならなくなり、歯の根の治療に至り更には歯が割れたり折れたりして最後には抜かなければならなくなる。
「ブラッシングはしっかりしているはずなのに」となる。

それはそうなのでしょうが、力の問題が大きくのし掛かって、プラス汚れの問題もあるから破壊状況が進んでいるのです。だから、力の問題をある程度認識した上で改善するか、上手く付き合っていかなかったら一生懸命歯ブラシを続けても改善はあまりしませんよということを伝えるのは、やりにくかったのです。

菅野:
私自身も歯医者さんから、「菅野さんは噛む力が強いみたいですね」と言われたことがあるのですが、だからどうすればよいかは分からないわけですよ。今、お話を伺っていて思ったのですが、確かに分かりにくいですね。

川元院長:
咬み合わせそのものは、実はシンプルな理想形態があります。ポイントになるのは上下左右の糸切り歯だったり、第一大臼歯だったりしますが、それぞれ理由があって生えてきていますから、上下左右の3次元的な位置関係が重要になるのです。

矯正治療のゴールというのは、ワールドレベルで同じなのです。理想形状はシンプルです。日本人にはなかなか理想形状の方はいないのですが、矯正治療は世界中どこでも、その理想形状を目指していきます。

あなたの場合は、理想型上と比較して真っ直ぐ噛んだ時はこうで、歯ぎしりしたときにはこう、右から見るとこうで、左から見るとこうです。だから奥歯にこういった負荷が掛かっています。それプラス、歯ぎしりや食いしばりが根拠となるような跡がお口の中にこれこれありますね、というようなことをスライドを使ったりして説明します。そうすると初めて、なるほどだからなんだねと。そんなことを言われたことは一度もなかったと。

どうすれば良いかと言えば、理想的には歯のポジションを変えた方が良いわけです。ただ、咬み合わせの理想形態はシンプルでも、それを目指すということはそんなにシンプルな問題ではありません。だって、大人の方で咬み合わせに難しさのあるすべての方が”矯正歯科”という、理想的ではあるけれども、時間と費用というハードルの高い治療を選べるとは限らないからです。

 

入れ歯には広いレンジの選択肢がある。難易度が高い分だけやり甲斐がある

自由が丘,入れ歯,義歯菅野:
次に先生がお得意とする入れ歯についてお聞きします。

今までのお話で、歯の問題は様々な方法で防ぐことができる、たとえば先ほどのマウスピースのお話がありました。しかし、結果的には私自身がそうであったように、抜くことになってしまいましたと。そこから後の話ですが、今はインプラントもあるし従来の入れ歯もありますし、素材の種類も増えている。様々な噛む機能回復の方法がありますが一長一短があると思うのです。

先生がお得意とされている入れ歯の一番のベネフィットは何ですか?

川元院長:
まず、入れ歯の場合は大袈裟なことをしなくて済みます。インプラントのような手術も必要ありませんということがひとつです。また、患者さん自身で脱着ができるので、掃除したりというメンテナンスが容易である、お手入れが楽ですよね。

あとは費用の点で、保険で作ることができますし、もっと望まれればお値段のかかるものも選べます。それには、保険の入れ歯ではできないような特種な設計を起こすというようなこともできます。

菅野:
なるほど。私たちは一口で入れ歯と言ってしまいますが、保険が適用されるようなもの、望めばバリエーションといいますか、選択のレンジが広いということですね。実は、そういうことも患者側ではあまり知らないかもしれない。
意外にも知らないことが多いですね、やはり。
特に設計を工夫するということを伺って、少し驚きました。「やっぱり、設計があるんだ」と驚きました。

川元院長:
そうなんです。特に部分入れ歯というのは設計次第なのです。
下の奥歯は抜歯になることが多くて、その場合は手前の歯にバネを掛けることになります。着けたり外したりするときには、バネを掛けている歯に負荷が掛かります。

奥歯の入れ歯を例に挙げますが、入れ歯の下は歯茎ですよね。歯茎というのは水分を含んでいる座布団のような組織なので、押されれば押されるほど沈んでいきます。歯茎の下には骨があります。骨は歯茎からの圧を介して押されていますので、ずっと押され続けると骨もへこんでいきます。

奥歯がなくなったケースの入れ歯というのは、だんだん奥に向かって沈むということが必ず起きます。沈むと何が起きるかというと、バネを掛けている歯が奥側に引き倒されるのです。そうすると今度は、その歯がグラグラしてきます。それで、バネを掛けている歯が抜歯に至る。その次も抜歯に至るということが繰り返されることが非常に多いのです。入れ歯は、簡単だからそれがベストということではないのです。

先に挙げた例の場合、年数が経てば入れ歯は抜歯装置になっていくというケースもあるのです。それを防ぐために、入れ歯ではない手段を採るのか、入れ歯でもバネを掛ける歯に対して何か工夫をするのかとか、バネの掛け方を工夫するのかということがでてくる。バネの掛かり方自体も、やり方によって全然異なります。その辺の設計は、もの凄いバリエーションがあります。その意味で、部分入れ歯は難しいのです。

入れ歯になったらお手上げと感じる人が多いですし、実は歯科技工士の中にもそういう人が多いのです。かつての勤務時代によく経験しましたが、歯を失って何か歯を作らなければならないとなった時に、インプラントではなく入れ歯でというと、「なんだ・・・」と言う歯科技工士さんがけっこういました。

「そうじゃないでしょ!ここからでしょ!」ということです。義歯になったら、そこからがドクターや技工士さんの設計思想など含めた技術の発揮どころです。そこまで知識のある方は、インプラントにも精通している人が多いですから、力量が試されているなと感じます。個々の歯になるべく負荷が掛からないように、どのようにリカバリーしていくかが試されているわけです。そこが面白みでもあるわけです。

今は、インプラントがいろいろ言われている時代ですから、なおさら選択肢についてはきちんと説明する。それは、インプラントについての風潮がこうだからインプラントについては言わないということではなく、並列で話をし、あるケースではインプラントのほうが良いかもしれないということを言っていく必要があると思うのです。

菅野:
たとえば、幾つかの選択肢に絞り込んだ上で先生に相談することもできるでしょうし、もしくは選択肢を提示された後にそれがどういうものなのかを、今の時代は調べる方法もたくさんあります。さらにベターな、ひょっとしたらベストの方法に辿り着ける可能性が以前に比べ非常に高くなっている。そんな時代に生きているのに、私たちは凄く勿体ないことをしている。

より満足を与えることのできる方法があるわけですよね。それなのに、一過的なサービスを受けているという認識しかない我々患者と歯医者さんの関係性というものを、もっとどうにかできたら良いのにと素直に思いました。

 

患者さんが歯医者を賢く利用できる時代。
歯科医の役割が変わってくる。

菅野:
今日伺った入れ歯のお話ですが、設計の思想、力学の問題、他の選択肢を知った上での選択であるとか、我々患者側としても「何とかして下さい」だけではダメなのかと思ったりしました。
今の時代、これからの時代、歯科医療はどうなっていくべきというようなお考えを伺えますでしょうか。

自由が丘,入れ歯,義歯川元院長:
現状、これだけのたくさんの歯医者さんがありますから、患者さんは好きな歯医者さんへ行かれてよいと思います。先ほど言いました、「患者さんに説明する時間があったら、面倒な資料をまとめる時間があるなら、一人でも二人でも患者を診た方がよい」という時代では明らかになくなっていると思います。でなければ、私たちの仕事はいつまでも銀歯を外してまた詰めて、直ぐに問題が出て、ということの繰り返しになります。

患者さんに対し歯の問題をきちんと説明して、患者さんは初めて耳にすることであっても納得を得て、治療の方法を選択し、今までとは違ってこんなことに気をつけて生活していきましょうといった情報を提供することが大事なのです。
大学時代のことです。その時は既に歯医者が過剰で大変な時代だと言われていたのですが、ある教授が「めちゃくちゃ良い時代だよ」と言うわけです。あまりそんな事を言われませんでしたから理由を尋ねました。

北海道の片田舎出身で跡継ぎだった教授は、自分が若い時代は医院へ着くと既に患者が5時頃から並び始めていて、ひたすら並んで待っているから自分は同じことをやっていただけだった。麻酔をして、詰めて、また来てねと。そこに治療の質など何も求められなかったと。

しかし、今の時代は違うと。これだけ技術も発達し、自分たちがやろうとさえ思えば、求めさえすれば、どんどん新しいことを手掛けてそこに没頭できる時代なのだと。「オマエ達は、凄く恵まれている」と。自分のやりかた次第だと。

昔は、患者さんのニーズもそれでしかなかったですから、そこに応えるしかない。今は、そういう時代ではなくなりましたから、自分たちが必要とされていること、私の場合なら再治療の繰り返しにならないようにすることですが、そのための情報提供をしてあげる、そのための知識と技術を身につけるということだと思います。

なんでもかんでも患者さんを流しながら治療する時代ではなく、一個一個の質を高めながら、情報提供する環境を整え伝えていくというのが、僕らの時代だと思うのです。

菅野:
今日は本当に目から鱗が落ちた日でした。もっとこっちも歯医者さんを賢く利用した方がいいのだと思いました。

川元院長:
そういうことになるんですかね。

菅野:
ほんのわずかな時間にお話を伺っただけなのに、これほど知らないことがあった。知らないが故に、これまでは言われるがままに受け入れていたこともあったわけです。ひょっとしたら、思い切って「先生、他のやりかたはないのですか?少し頑張って長いこと通いますから、別のやり方で噛む機能を取り戻すことはできないのですか?」というような患者側の選択の仕方をする。

取り替える物の種類の選択ではなく、回復のさせ方の選択、たとえばどれぐらいの期間をかけるであるとか、費用をかけるとか、エネルギーをかけるとかの選択です。患者側もそういう認識の仕方をすべきだと感じました。

もっと言えば、そんな選択の仕方があるのかないのかを、歯医者さんに尋ねてみるべきだなと感じました。ネットを開けば、先ほどの新しい治療法などがどんどん紹介されていますが、そうではなくて川元先生のような歯医者さんが身近にいる信憑性の高い情報源なわけです。

歯医者さんを賢く利用することで、「無くして分かるありがたさ」の代表ともいえる歯に対してもっと前向きに向き合うことができるのではないかという気がしました。
ありがとうございました。



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